人物撮影について

人物撮影について未だに考えることは、人を撮ることの難しさです。そもそも簡単なことであるとは思ってもいないのですが、どれだけ多くの方を撮影してもこればっかりは難しいです。女性をきれいに撮ることも男性を格好良く撮ることも子供をかわいらしく撮るというのも、技術的なセオリーをなぞっていけばこれらの写真自体の役割は、それほど大きく外れることはないでしょう。このことは商業写真館としての最低限にして絶対条件です。
しかし写真の中にその人物を捉えきれるのかと言うと、全く話は違ってきます。人物とはその人間の内面、人柄、精神性というところ。もっと的確に捉えるべき狙いを言葉にするならば、その人間の人生や魂と言って差し支えないでしょう。これは簡単に写せやしません。その人の容姿や肩書きや何かを表すのならば、コミュニケーションや撮影技術で引っ張り出せることです。そういう意味では商業的に人物写真を撮るのも商品写真を撮るのも、被写体とワークフローとクライアントの相違であって、フォトグラファーとしての役割は変わらないと思っています。フォトグラファーによって得手不得手はあるでしょうし、商品を撮るに際して物体は照れたりぐずったりしないというのは言えます。人間の生物的なマテリアルやフォルムの表現というのは、あるレベルを超えると商業写真館の提供する技術の範疇外です。
人物撮影においてその被写体となる人の人生だ魂だと言うから、余計に難しく感じるのは否めません。お断りしておきますが、人生の撮影という依頼を受けることはありませんし、そういう言葉で依頼されたら戸惑うでしょうね。それに、誰でもかでもの心の奥底を見てみたいとも思いません。そのような興味が起こるのはそう感じさせる素質を備えた、そして波長の合う方に対してのみです。ここで言う人物を撮るということは、あくまでフォトグラファーとしてのエゴであり写真家としてのテーマです。スタジオのフォトグラファーとしてオーディション写真や、プロフィール写真を撮影することとは無関係です。とは言え、写真家としてのこういう欲求が日常の業務に対してモチベーションになるので、やはり考えなくなったら終わりだなと思います。

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