ハサミ

コマーシャルフォトスタジオの主な技術的な業務は、自然界に存在する明と暗を輝度値に置き換え、それをどう表現するかが全てといっても過言ではありません。自然界にある最明は、視力を奪われる程明るい状態を指し、暗は視界が全く無くなる状態を指すのですが、実はこの非常に広い範囲で立体が立体として成立し、我々の目に物体として認識されているのです。しかし、広告物の殆どは、この明暗の明は紙の白で表され、暗はインクの黒で置き換えられています。この非常に狭い範囲での立体としての表情を平面に置き換えなければならない訳ですから、独自の解釈と再現力が必要不可欠となって来るのです。下記に掲載されている撮影例は、そう言う意味で、コマーシャルフォトスタジオとしての技術的な映像哲学を深く考えさせられる撮影となりました。

上記掲載画像は、ユニークな形状と深みのある輝きを放つハサミを美しく再現することを前提に、コンセプトを組み立てたものです。まずディスプレイに関しては、ビロード素材を背景に使用し、ハサミを置くベストポジションを探す為、カメラのファインダーを覗きながら、その後想定されるライティングを元に試行錯誤を繰り返しました。そしてライティングですが、後方よりの面光源をメインライトとし、その面光源を黒ケント紙等でその光を遮ることによって、光その物にグラデーションを作り、それを直接写しこむことによって金属の質感を表現しました。そしてさらにより劇的な作品とする為にハニカムグリッドを使ったハロゲンランプをアクセントライトとする等、アナログ上での様々な工夫や、撮影後のコンピュータによるデジタル加工処理等による、従来には無い新しい発想と技法によって、全体のイメージを単なる美しいハサミのフォルムや素材の質感を伝えるだけに留まることなく、一枚の画像として,高尚なものとなるよう努力しました。

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